「え、同じ土地なのに、なんで価格が4つもあるの?」
不動産に関わっていると、こんな疑問をよく耳にします。
実は、不動産には家電や車のように「定価」がありません。そのかわりに、目的や立場によって価格が大きく変わるという特徴があります。
その代表例が、今回ご紹介する「一物四価(いちぶつよんか)」という考え方。
この仕組みを知っているかどうかで、マイホームの購入・売却・相続などで数百万円の差が出ることもある重要な知識です。
この記事では、「一物四価」の意味やそれぞれの価格の特徴、活用されるシーン、注意点までわかりやすく解説します。

一物四価とは?──1つの不動産に4つの価格があるという現実
「一物四価」とは、ひとつの不動産に対して、4つの異なる評価額が存在するという考え方です。
日本の不動産市場でよく使われる以下の4つの価格がそれにあたります。
① 実勢価格(市場価格)
- 実際に売買される価格
- 不動産ポータルサイトや広告、取引事例などに出てくる価格
- 「今いくらで売れるか?」を示す最もリアルな価格
たとえば、同じエリア・築年数・間取りの家がいくらで売れたか?といった情報から相場が形成されます。
② 公示価格(公的価格)
- 国が毎年発表する土地の基準価格
- 地価公示(1月1日時点)や都道府県地価調査(7月1日時点)で決まる
- 相続税や固定資産税の計算基準の一つになることも
これは実際に取引された価格ではなく、国が定めた参考価格です。
③ 路線価(相続税評価額)
- 相続や贈与の際に使用される価格
- 国税庁が毎年発表
- 公示価格の約8割を目安に設定される
相続税を計算する際はこの路線価が基準になります。エリアによっては実勢価格と大きく差が出ることもあります。
④ 固定資産税評価額
- 固定資産税や都市計画税の計算に使われる価格
- 各市区町村が3年ごとに評価
- 公示価格の約7割程度が目安
「固定資産税の評価額が思ったより低い」と感じることがあるのは、この価格が使われているためです。
なぜ同じ土地に複数の価格があるの?
ここが「一物四価」の最大のポイントです。
同じ土地・建物に対してこれほど価格が違うのは、価格を決める“目的”と“立場”が異なるからです。
| 価格の種類 | 誰が決める? | 目的 |
|---|---|---|
| 実勢価格 | 売主・買主・不動産会社 | 実際の売買(市場取引) |
| 公示価格 | 国(土地鑑定委員会) | 土地価格の基準・指標 |
| 路線価 | 国税庁 | 相続税や贈与税の算出 |
| 固定資産税評価額 | 自治体(市区町村) | 固定資産税の課税基準 |
つまり、「どの価格が正しい」ではなく、用途に応じてそれぞれ正しい価格が存在しているということです。
一物四価が影響するリアルな場面
① マイホーム購入時:相場より高く買ってしまうリスク
実勢価格を知らずに購入すると、「実は相場より500万円も高かった…」ということも。
② 相続時:相続税が高すぎたり、低すぎたり
相続税は路線価で計算されるため、実勢価格とのギャップがあるエリアでは注意が必要です。
③ 売却時:査定額と売却額のギャップに驚く
不動産会社の査定は基本的に実勢価格ベースですが、公示価格や路線価との違いに戸惑う方も多いです。
よくある誤解:「公示価格=売れる価格」ではない!
「この土地、公示価格で1坪30万円って聞いたから、それで売れると思ってた!」という声はよくあります。
でも実は、公示価格や路線価はあくまで“参考価格”。
実際に売買が成立する価格(=実勢価格)とは違います。
特に都市部では、実勢価格が公示価格の1.5倍〜2倍以上になるケースも珍しくありません。
まとめ:一物四価を知らないと損!知っていれば安心!
一物四価は、
- 不動産を「買う人」
- 売る人
- 相続・贈与を受ける人
すべてにとって重要な知識です。
価格の仕組みを知らないまま取引や相続を進めてしまうと、思わぬ損失やトラブルにつながることもあります。
逆に言えば、知っていれば防げることもたくさん。
不動産に関わるすべての人にとって、「一物四価」は教養レベルで知っておくべき常識です。
知らなければ「損」する。知っていれば「得」できる。 それが「一物四価」という考え方です。
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